ホットプレス機の温度制御において、熱交換器へ冷却水を安定供給できる「チラー」の選定は、製品品質や生産性に直結する重要な要素です。
しかし実際には、
「冷却能力はどのくらい必要か?」
「空冷式と水冷式の違いは?」
「水槽付きと水槽なし、どちらがいいの?」
といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、10~100kWの冷却能力帯に対応したチラーを対象に、
特に導入実績が豊富なオリオン機械・アピステの機種を中心に、
選定時に押さえておきたいポイントや冷却方式の違いを、初心者にもわかりやすく解説します。
これからチラーの導入や更新を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
また、クーリングタワーも比較検討されたい方は、チラーとクーリングタワーの違いについて、以下の記事で詳しく紹介しています:
もくじ
ホットプレスにおけるチラーの役割とは?
🔹 熱交換器とチラーの関係
ホットプレス機では、成形や接着のために熱板を高温(150~300℃)に加熱する工程があり、その一方で冷却工程も非常に重要です。
この冷却をスムーズかつ精密に行うために使用されるのが「熱交換器」であり、そこに供給される冷却水を安定して供給するのが「チラー」の役割です。
チラーは、設定された温度の水を一定の流量・圧力で供給し、熱交換器を介して熱板の温度を下げます。
この間接冷却方式により、熱媒体油に直接冷却水を触れさせることなく、安全かつ効率的に冷却を行うことが可能です。
🔍 チラーが冷やすのは「熱板」ではなく、「熱交換器を通る水」。
つまり、冷却プロセス全体の“心臓部”がチラーです。
🔹 なぜ温度管理が重要なのか?
ホットプレス工程において、温度管理は製品品質の安定性を左右する最も重要なファクターの一つです。
成形温度が高すぎると…:樹脂の焦げや表面の変質につながる
温度が低すぎると…:加圧しても接着しない・硬化が不十分になる
冷却が不安定だと…:脱型タイミングがバラつき、寸法精度に影響
つまり、一定温度で加熱し、一定速度で冷却するという再現性の高い温度プロファイルが必要不可欠です。
この再現性を支えるのが、チラーによる安定した冷却水供給なのです。
特に、1日中連続稼働するラインでは、チラーの冷却能力・信頼性が生産効率に直結します。
🔹 冷却水供給に必要な性能とは
チラーをホットプレス機の冷却用途で使う場合、下記の性能が求められます。
性能項目 | 重要理由 |
---|---|
冷却能力(kW) | 熱交換器が受け取る熱量をきちんと除去する力。熱板サイズや処理物により必要能力は異なる(例:20kW〜100kW以上) |
吐出圧力・流量 | 熱交換器や配管抵抗に打ち勝つだけのポンプ圧力が必要。過不足は冷却性能に影響 |
連続運転への耐久性 | 24時間稼働でもトラブルなく動く冷却ユニットであることが重要 |
設置環境適応性 | 工場の屋内/屋外温度・湿度に耐える構造か(空冷/水冷の選定に関係) |
このように、冷却水供給は単なる「水を冷やす機械」ではなく、熱工程のパフォーマンスを最大化する要です。
チラー選定時にまず押さえるべき3つのポイント
ホットプレス向けにチラーを選ぶ際、種類や型式の違いに迷うことはよくあります。
しかし、選定で失敗しないためには、以下の3つの観点から順を追って考えるのが鉄則です。
🔹 冷却能力(10〜100kW)の目安を簡易的に把握する
冷却能力とは、チラーが1秒間あたりに除去できる熱量(kW)を指します。
ホットプレスでは主に熱板の放熱量を計算することで、必要な冷却能力の目安をつかむことができます。
📐 【簡易計算式】熱板の冷却に必要な冷却能力(kW)
Q=m×c×ΔT/t/1000
Q:必要冷却能力(kW)
m:熱板の質量(kg)
c:比熱(鉄の場合 約500 J/kg·K)
ΔT:冷却温度差(℃)
t:冷却にかける時間(秒)
✅ 【計算例】
熱板2枚(各300kg)を、250℃から80℃まで30分(1800秒)で冷却する場合:
Q=600×500×170/1800/1000
=51,000,000/1,800,000
=28.3 kW
→ 必要な冷却能力は約28.3kW。
→ 実運用では10〜20%余裕を持って、30〜40kWクラスのチラーを選定するのが理想です。
🔹 空冷式 vs 水冷式|設置環境から考える選び方
チラーには大きく分けて「空冷式」と「水冷式」の2種類があります。
この選定は、設備の設置場所や排熱条件によって最適解が変わります。
✅ 空冷式の特徴
外気によって冷媒を冷やすタイプ
設置が簡単(外部冷却水不要)
排熱がそのまま周囲に放出されるため、屋内温度が上がる点に注意
夏場の周囲温度上昇で冷却能力が低下しやすい
✅ 水冷式の特徴
外部の冷却水(冷却塔や工場水)を使って冷却
室内排熱が少なく、温度変化が少ない
冷却水の配管が必要、設置工事もやや大がかり
定期的な冷却水管理(スケール・藻対策)が必要
選定の目安
条件 | 推奨方式 |
---|---|
工場内が狭く、空調が弱い | 水冷式(室温上昇を抑えられる) |
簡単に設置したい・移設も視野 | 空冷式(コンセント+ダクト程度) |
夏場に40℃近くなる屋内 | 水冷式(空冷は能力が落ちる可能性) |
工場に既設の冷却塔がある | 水冷式の効率が良い |
初期コストは空冷式が安価で、保守も簡単ですが、周囲温度や排熱の影響を受けやすい点には注意が必要です。
一方、水冷式はランニングコストが抑えられる傾向があります。
🔹 オプションの有無・水槽の有無も実は重要
チラーは冷却方式だけでなく、「水槽(タンク)付き or なし」によっても使い勝手が異なります。
種類 | 特徴 | 向いているケース |
---|---|---|
水槽付きチラー | 内部にバッファタンクを持ち、水の安定供給が可能 | 配管がシンプル、初心者にも扱いやすい |
水槽なし(外部循環型) | 装置と直結し、コンパクトで反応が早い | 制御が緻密、冷却応答速度を重視する場合に最適 |
今回のように熱交換器に冷却水を供給する用途では、水槽なしの外部循環型が一般的です。
ただし、水量の変動が激しい現場では、バッファとして水槽があるほうが安定します。
このように、「冷却能力」「冷却方式」「チラー構成(水槽の有無)」という3点を理解することで、自社に最適なチラーの方向性が見えてきます。
次章では、具体的な機種の選定例(オリオン・アピステ)を紹介していきます。
おすすめチラー機種|オリオン・アピステの代表モデル紹介
ここでは、ホットプレスの熱交換器冷却用途において高い評価を得ている、オリオン機械とアピステの代表的なチラーシリーズをご紹介します。
🔹 オリオン機械|RKE–A/B/Cシリーズ(空冷・水冷対応DCインバータチラー)
オリオン機械のRKEシリーズは、冷却能力約10〜96kWまでをカバーし、中〜大型のホットプレスにおける熱板の冷却に最適です。
DCインバータ制御搭載により、省エネ性と温度安定性を両立(最大30%の省エネ効果)
±0.1〜±0.5℃の高精度温度制御で、製品の品質ばらつきを抑制
空冷式・水冷式の両対応で、工場環境に応じた選定が可能
水槽付き(RKE-A/B)/水槽なし・省スペース(RKE-C)から選べる柔軟な構成
🔧 活用例:大型熱板や多段プレスを冷却する場合でも、必要な冷却能力を十分にカバー。
🔹 アピステ|PCU–SLシリーズ(±0.1℃制御・高応答空冷チラー)
アピステのPCU–SLシリーズは、±0.1℃の温度制御精度と高速応答性を特徴とし、精密温度管理が必要な工程に最適です。
✅ 冷却能力1.3〜13.3kW(SL14000までラインナップ)
✅ 独自のIOFセンシング技術により、流量・温度変化に対する応答速度が業界最速クラス
✅ IPX4相当の防水構造で、屋内・屋外どちらにも設置可能
✅ 小型・高精度モデルとして、実験設備・試験機にも人気
🔧 活用例:CFRP成形や樹脂接着など、温度プロファイルが製品精度に直結する現場に最適。
用途別チラー選定早見表
使用条件・用途 | 推奨シリーズ | 主な特長 |
---|---|---|
熱板サイズが大きく、冷却負荷が高い | オリオン RKE-A/Bシリーズ | 冷却能力10〜96kW、水槽付き、省エネ設計 |
設置スペースが限られ、コンパクトさを重視 | オリオン RKE-Cシリーズ | 省スペース型、空冷/水冷どちらも選択可能 |
±0.1℃の高精度制御が必要 | アピステ PCU–SLシリーズ | 高速応答、IPX4防水、屋外設置可能 |
試験装置や小型ホットプレス用途 | アピステ PCU–SLシリーズ | 小容量対応、制御性重視 |
チラー選定に迷ったら、ZeroPressにご相談ください
ホットプレス機の性能を最大限に引き出すには、「どのチラーをどう使うか?」という冷却計画が非常に重要です。
ZeroPressでは、以下のような導入支援・技術相談を承っています:
📐 冷却能力の簡易試算(熱板重量・ΔT・時間から逆算)
🔁 熱交換器との最適構成の提案
❄️ 空冷/水冷の適合診断と機種選定
🏭 オリオン・アピステ等を含む導入事例の紹介
💬 チラー選定や設備更新に関する無料相談
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