ホットプレスに最適なポンプをどう選ぶ?
失敗しないための基礎知識と比較ポイントを解説
ホットプレス機の心臓部ともいえる「熱媒体油循環ポンプ」。
適切なポンプを選ばなければ、加熱ムラや昇温遅れ、油漏れによるトラブルを招く恐れがあります。
このブログでは、340℃以下の熱媒体油を使用するホットプレス機を対象に、
ポンプの選定で失敗しないための基本ポイントと、主要メーカーの代表モデルを徹底比較。
また、近年増えているシールレスのキャンドポンプについても、
「冷却水の注意点」や「配管材質の選び方」など、現場目線での実務的な情報を詳しく解説します。
✅ このブログを読めば…
使用条件に合ったポンプの選定基準が分かる
メカシール型とキャンド型の違いが明確になる
各メーカーの代表的なポンプが一覧で比較できる
設備トラブルを防ぐための注意点が事前に把握できる
もくじ
ポンプ選定の3つのポイント
ホットプレス機における熱媒体油ポンプの選定は、「どれでも動けばよい」というものではありません。誤った選定は、加熱不良や油劣化、設備トラブルの原因になります。以下の3つの観点から適切に選定しましょう。
1. 使用温度・流量・全揚程
使用温度帯:使用する熱媒体油の仕様により異なりますが、ホットプレスでは200~340℃の範囲が一般的です。
必要流量:熱板の面積、流路の構造、温度制御精度に応じて設計します。
とくに熱伝達の効率や熱媒体油の劣化を抑える観点から、配管内の流速が1~3m/sec程度になるよう流量を決めるのが望ましいとされています。全揚程:配管の長さや高低差、バルブ抵抗、油の粘度などを加味して計算します。
💡過大な流量や揚程を設定すると、制御性が悪化し、エネルギーロスやポンプの早期摩耗にもつながります。
2. 軸封方式(シール構造)の選択
軸封方式 | 特徴 | 推奨される用途 |
---|---|---|
メカニカルシール | 最も一般的で構造がシンプル。定期的なシール交換が必要 | 一般的な成形ライン、木材・樹脂・ゴム加工など |
キャンドモータ(シールレス) | 軸封がなく完全密閉構造。油漏れリスクがゼロ | 高温・高精度・クリーンルームなど油漏れ厳禁の環境 |
マグネットドライブ | 磁力で駆動軸を伝達。構造が簡潔で小型向き | コンパクトな研究用途・小型プレス機に最適 |
3. 設置環境とユーティリティ条件
屋内設置が基本ですが、冷却水の有無や水質条件によって選べるポンプが変わります。
キャンドポンプなど冷却水を必要とする機種では、配管材質・水質・清掃時の排水管理まで考慮が必要です(→詳細は後述)。
キャンドポンプ使用時の注意点
“油漏れゼロ”の裏にある冷却水のリスクとは?
キャンドモータポンプは軸封が不要で完全密閉構造。油漏れリスクがなく、信頼性の高さから高温・高純度環境でよく使われます。
しかし、高温分離型(外部冷却構造)の場合、冷却水ユーティリティに要注意です。
冷却水設計で押さえておきたいポイント
注意点 | 内容 |
---|---|
水質の管理 | 純水または清水を使用。井水・硬水・工業用水は注意が必要。サビ・スケールで詰まりやすく故障の原因に。 |
配管材質 | 冷却配管は鉄ではなく、ステンレスまたは樹脂製(PVC、PEなど)の使用を推奨。腐食対策が不可欠。 |
清掃時の排水管理 | チラー・クーリングタワーを使用する場合、清掃時の排水が冷却系に流れ込まない構造設計が必須。 |
流路の詰まり対策 | 冷却経路は狭いため、フィルター設置・定期点検でスケールやゴミの侵入を防ぐ。 |
⚠ 放っておくと冷却不良 → モータ焼損。ユーティリティ設計込みでポンプを選ぶ必要があります。
水冷不要の空冷式キャンドポンプも選択肢に
冷却水設備を使いたくない、あるいは水質管理が難しい現場では、空冷式ポンプが効果的です。
帝国電機製作所(Xモーターシリーズ)
Speck社(TOEシリーズ)
これらは冷却水不要で340℃級の高温油にも対応可能。空冷フィンや特殊構造で、メンテナンス性も大きく向上します。
主な熱媒体油循環ポンプ|製品比較一覧
メーカー | 製品名 | 使用温度帯 | 軸封方式 | 流量/揚程(目安) | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
酉島製作所 | CERSシリーズ | ~340℃ | メカニカルシール(空冷) | ~300 m³/h / ~98 m | 冷却水不要で高温運転可能。木工・樹脂用途で実績多数。 |
ニクニ | TFDシリーズ(熱媒仕様) | ~230℃ | メカニカル+グランドパッキン | 小流量 / 高揚程(~50 m) | 渦流構造で安定した供給。金型温調や研究用途に適する。 |
帝国電機製作所 | キャンドポンプ(水冷タイプ/空冷タイプ) | ~340℃ | シールレス(キャンドモータ) | ~10 m³/min / ~160 m | 水冷タイプは高耐熱・高信頼性。空冷タイプは冷却水不要で、省メンテ・簡易設置が可能。 |
日機装 | 高温用キャンド(T型) | ~450℃(実用340℃) | シールレス(キャンドモータ) | ~数百 m³/h | 自己冷却回路付きで安定運転。超高温の連続使用に最適。 |
Speck(スペック) | TOEシリーズ | ~350℃ | シールレス(マグネットドライブ) | 100~500 L/min / ~50 m | 空冷ファン内蔵で冷却水不要。欧州製の省スペース設計。 |
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