ホットプレスや加熱装置の運用において、熱媒体油の選定は、加熱効率・安全性・メンテナンス性に直結する重要なポイントです。
この記事では、温度帯別に選ぶ熱媒体油の種類と使い分け、代表的な製品「バーレルサーム200・400」について解説するとともに、現場でよくある質問への回答もご紹介します。
もくじ
まず押さえておきたい|熱媒体油の選定基準
「バルク温度」を基準に選ぶ
熱媒体油を選ぶときは、最高使用温度=バルク温度(油全体の平均温度)を基準にします。
温度センサーで制御・記録されるのもこのバルク温度であり、運用上の重要な判断指標となります。
温度帯別|熱媒体油の選択肢と用途
使用温度帯 | 推奨熱媒体 | 主な用途 |
---|---|---|
~80℃ | 温水(お湯) | 低温加熱、乾燥、前処理 |
~290℃ | バーレルサーム200 | 樹脂・木材・複合材成形、加熱炉 |
~340℃ | バーレルサーム400 | CFRPやPEEKなど高温成形、試験用加熱設備 |
💧 温水循環(〜80℃)
- もっとも扱いやすく、安全性が高い
- 導入コストも比較的安価
ただし、加熱速度や精度は限定的
おすすめの用途:
- 前処理工程
- 簡易加熱・乾燥装
- 安全性重視の設備
🛢 バーレルサーム200(〜290℃)
- 合成系熱媒体油の標準品
- 常圧下で液相のまま290℃まで使用可能
- 引火点:206℃、平均沸点:382℃
- 低臭気・低毒性・腐食性がない
おすすめの用途:
- 樹脂成形・合板・建材プレス
- 炭素繊維・天然素材の中温成形
- 安全性とメンテナンス性を両立したい現場
🔥 バーレルサーム400(〜340℃)
- 高耐熱性を備えた合成系熱媒体油
- 境膜温度がより高く、熱分解しにくい
- 高性能ポリマーやCFRP用途に対応
おすすめの用途:
- 高耐熱素材(PEEK、CFRP)の加熱成形
- 試験研究用プレス装置
- 320℃以上の境膜温度が見込まれる高負荷工程
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. バーレルサーム200の使用温度(290℃)が、引火点(206℃)より高いのは大丈夫?
A. 問題ありません。
引火点は「気化した油が空気と混ざり、着火源があった場合に燃焼する温度」のことです。
一方、バーレルサームは密閉された配管内で液体のまま循環しているため、気化・点火条件を満たさず、実運用上の危険性は極めて低く抑えられています。
Q2. 「バルク温度」と「境膜温度」の違いは?
用語 | 定義 | 運用上の意味 |
---|---|---|
バルク温度 | 油全体の平均温度 | 運転制御・センサー管理の基準となる温度 |
境膜温度 | 熱板などに接する油膜の局所温度 | 油の分解リスクがあるピーク温度。設計時に留意 |
※必ず「バルク温度」を基準に制御してください。境膜温度は実測できず、設計上の安全マージンとして扱われます。
Q3. 熱媒体油の劣化を早める要因は何ですか?
A. 主に以下の3つが劣化を促進します。
要因 | 内容 | 対策 |
---|---|---|
① 過加熱 | 境膜温度が上限を超えると局所的に分解が進行 | 油の温度管理・加熱装置の見直し |
② 酸素の混入 | 開放系で空気と接すると酸化が進む | 密閉設計・膨張タンク運用の最適化 |
③ 長時間の滞留 | 熱源に近い部分で油が停滞すると炭化しやすい | 配管構成・流量バランスの設計改善 |
ワンポイント:
色・臭い・粘度の変化が見られたら、劣化のサインです。オイル交換や系統洗浄をご検討ください。
ZeroPressがご提案する「加熱ソリューション」
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